7 滑川の昔話・伝説
(1)十兵衛むじな
波の平(今のホテル天城から線路にかけたあたり)の南麓にむじなくぼという所がある。 昔、この辺に十兵衛むじなといって、腹に十文字の模様があるむじながいた。 このむじなが、ある夜、お月様に化けて汽車を止めてしまったという。 線路近くにお月様を見た運転手の驚きのほどがうかがわれる。(まだのんびりしていた大正時代の話である。)(遠藤氏の話として)
〇 昔、むじなくぼにいたむじなを捕いたことがある。線路附近の土管の中にむじながいたので、煙でいぶり出した。 とうがらしなどをいれていぶり出したので、むじなが驚いて一方から出てきたところを捕まえたということである。(青木氏より)
〇 そのむじなの子孫かどうかは知らないが、今でもこの附近にはむじながいて、庭先などを横切るときがあるという。(野上さんより)
※むじな・・・たぬきのこと
(2)見渡権現 みわたりごんげん
観音院の南側にみつみね橋がある。この辺りは見渡という。 昔、ここに見渡権現があった。この神様は欲が深くて、境内の枯木ばかりか、小さな木の枝を折っても祟(たた)る神様だといわれていたが、 いつの間にか無くなってしまった。(遠藤氏)
(3)豊川稲荷神社にまつわる話
明治の終わり頃の話である。観音院の寺の境内あたりにキツネが住みついていたそうである。このキツネが身ごもり、子どもを産んだ。 高木ハツという人は、これをみて餌などをやり、キツネを助けていたが、いつしかキツネに取りつかれてしまったそうだ。 そこで高木ハツは常陸太田のお不動さんに行って御祈祷を教わり、キツネを払うことができたそうである。 その後、高木ハツは稲荷信仰に入り、現在の地を取得して稲荷神社をつくったということである。(高木氏)
参考資料:『滑川の歴史と景勝』画像を一部転載